●研究概要 本研究室では,機械加工組立型産業を中心とした生産システムの設計,計画,管理に関する研究を行っています.
特に,市場ニーズに柔軟に適応しながら多種多様な製品を短いリードタイムで効率良く生産するための生産計画法やそれを実現する高性能なスケジューリング法について,数値シミュレーションや各種最適化理論に基づいて研究をしています.
●研究キーワード |
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●現在の主な研究テーマ |
・生産計画とスケジューリングの統合化・全体最適化 ・各種最適化法によるスケジューリング性能の向上 遺伝的アルゴリズム,分布推定アルゴリズム, ラグランジュ緩和法など. |
●研究紹介(過去の研究も含む) |
・遺伝的アルゴリズムと優先規則の融合による動的スケジューリング ・定期的最適化とリアルタイムスケジューリングの融合による処理時間の不確実性を考慮した動的スケジューリング ・階層型ニューラルネットワークを用いた動的ジョブショップスケジューリング ・ニューラルネットワークを用いた動的ジョブショップスケジューリングのための優先規則作成法 ・処理時間の異なる代替機械を有する動的ジョブショップにおける機械選択ルール ・タイムウインドウに基づく複数AGVのハイブリッド型運行管理 |
●遺伝的アルゴリズムと優先規則の 融合による動的スケジューリング |
性能の良い優先規則が持つ知識に依存したスケジューリングと,遺伝的アルゴリズムによるスケジュールの探索を融合した方法によって効率的に動的スケジューリング環境におけるローリングスケジューリングを行う方法を提案した.問題の規模や条件によって,知識依存型のスケジューリングと探索依存型のスケジューリングのどちらを重視するかを調整するパラメータを導入している.また,単にGAのみで探索する場合と比べて,動的環境における優先規則の持つ知識によって余裕を多く含んだ動的環境に適した順序決定が行われていることを確認した. |
●定期的最適化とリアルタイムスケジューリングの融合による処理時間の不確実性を考慮した動的スケジューリング |
処理時間変動などの不確実性がある環境において有効なスケジューリング法として,単一の優先規則を用いたオンライン/リアルタイムスケジューリングと,ある将来の一定期間の情報が既知としてオフラインで最適スケジュールを探索する方法の両者を融合したスケジューリング法を提案している.定期的にローリングスケジューリングを行う際に,計画時点では期待処理時間に基づいて単一の優先規則と確率的探索法(GA)を融合した方法によって最良スケジュールを探索するが,実行段階では,探索されたスケジュールにおける優先規則の部分はリアルタイムで適用することで,計画的に最適化を行いつつ現場の不確実性にも柔軟に対応できる方法であり,さまざまな不確実性の大きさを想定した数値実験によってその有効性を確認した. |
●階層型ニューラルネットワークを用いた動的ジョブショップスケジューリング |
ジョブが断続的にショップに投入される動的スケジューリング環境における最も実用的手法は,優先規則(ディスパッチングルール)を適用する手法である.しかし,優先規則の有効性はショップ内の状況によって変わるため,常に最も有効な単一ルールは存在しない.本研究では,ショップや生産対象ジョブの情報に基づいてジョブの処理順序を決定する優先度を算出するニューラルネットワークを2段階で学習する方法を提案している.ショップの状況や生産対象の条件が変動するような環境においても優れた性能を持つことを確認している. |
●ニューラルネットワークを用いた動的ジョブショップスケジューリングのための優先規則作成法 |
上記のニューラルネットワークによって学習された優先規則は既存のディスパッチグルールよりも優れたリアルタイムスケジューリングを行うことができるが.その意思決定過程は複雑であり,そのままでは人間が理解困難であるという欠点を持つ.そこで,学習後のニューラルネットワークから相互情報量に基づいて簡素な単項式型のルールを抽出する方法を提案している.その結果,簡略化の程度が大きいほど優先規則の性能は劣る傾向があるが,適度に簡略化することによってむしろ汎化能力が高くなる現象が生じること,また,ある程度理解可能な程度に更に簡略化を進めた場合でも,従来提案されているディスパッチングルールよりも高性能な優先規則が得られることを確認した. |
●処理時間の異なる代替機械を有する 動的ジョブショップにおける機械選択ルール |
大規模ジョブショップのワークセンタにおける機械選択のための優先規則について提案している.優先規則による機械選択法としては,WINQやNINQなどの機械間の負荷平準化を目的として機械選択を行う方法などが主にFMSのスケジューリングにおいて検討されているが,このようなルールではあくまでもその時点での局所的な負荷平準化しか考慮されておらず,動的な環境での長期的な観点からの負荷配分が考慮されていないと考えられる.本論文では,将来にわたるすべての情報が既知ではないという動的環境を想定した簡単な機械選択ルール(WINQ+RPT+PT)×PTルールを提案した.機械選択の時期をできるだけ遅らせ,割り付けるジョブの優先順序も考慮した機械選択法など様々な方法と比較してもこのルールが優れていることを確認している. |
●タイムウインドウに基づく複数AGVのハイブリッド型運行管理 |
ジョブショップ型の動的生産環境における複数AGVの効率的な運行管理方策を提案した.動的環境では,処理されるジョブ(部品)が断続的にショップに投入され,それらジョブの情報が将来に渡って全て既知ではなく,また生産現場ではさまざまな不測の事態が発生するため,事前にAGVの最適なスケジュールを決定しておいてそれをそのまま実行する事は困難である.そこで,ホストコンピュータによるタイムウインドウを用いた集中管理とAGVの自律走行を混合した経路決定法を提案している.ジョブショップ型の生産環境を想定した現実に近い実験モデルを用いて複数AGVの運行管理実験を行い,このハイブリッド型運行管理方策の有効性を検証した. |